だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
「ああ、目が覚めたみたいだな」
手にしていたお盆を脇に置いて、私に近づく。額にそっと当てられた彼の手は、それまで水でも触っていたのかひんやりとして心地いい。
「まだ熱いな。紗季、なにか食べられるか? 一応、おかゆは用意したが」
お盆に乗せられた一人用の土鍋を見る。
レトルトではなく、どうやら彼が手作りしたようだと驚いた。
「ありがとう。でも、仕事は?」
掠れた声で端的に尋ねる。
たしか和也さんは、週明けから二週間ほど出張が入っていたはず。それに合わせて片づけておきたい仕事もあっただろうと想像に容易い。
私としても、長く離れてしまう前に気持ちを伝えようと思っていた。
けれど、この体調では難しい。話をするのは、彼の帰宅を待ってからになりそうだ。
「具合の悪い妻を、ひとりにするわけにはいかないだろ? どうせ心配で仕事なんて手につかないから、今日は在宅にした」
「でも……」
さらに言い募ろうとした私の頬に、彼がそっと手を添える。
「俺のことは気にしなくていい。紗季は早く回復することだけに集中して」
まだなにかを言おうとする私から、和也さんは手を離して一歩離れた。それから、ベッドで食事がしやすいように整え始める。
「ほら。少しでも食べた方がいい」
彼に譲る様子はまったくない。
それなら、これ以上の迷惑をかけないためにも早く元気になって安心させてあげるべきだ。
和也さんに手伝ってもらいながら、怠い体をなんとか起こす。
「食べさせてあげようか」
心配そうな顔に少しのいたずら心を混ぜて、和也さんが申し出る。
「そ、それくらいは、できるから」
「そう? それは残念」
わざとらしい口調でそう言ったかと思えば、すっと表情が真面目なものに変わる。
「辛かったら、隠さずに言うんだぞ」
真っすぐに私に向けられた彼の目には、私を案ずる色が滲んでいた。
椅子をベッドの脇に引き寄せた和也さんが、それに座ってこちらを見ている。その背後には、いつの間にか机が持ち込まれていた。
どうやら彼は、ここで仕事をしながら私を見守ってくれていたらしい。それを申し訳なく思うと同時に、うれしいとも感じた。
和也さんの視線を感じながら、なんとかおかゆを完食する。それから彼に差し出された薬を飲んで、再び体を横たえた。
手にしていたお盆を脇に置いて、私に近づく。額にそっと当てられた彼の手は、それまで水でも触っていたのかひんやりとして心地いい。
「まだ熱いな。紗季、なにか食べられるか? 一応、おかゆは用意したが」
お盆に乗せられた一人用の土鍋を見る。
レトルトではなく、どうやら彼が手作りしたようだと驚いた。
「ありがとう。でも、仕事は?」
掠れた声で端的に尋ねる。
たしか和也さんは、週明けから二週間ほど出張が入っていたはず。それに合わせて片づけておきたい仕事もあっただろうと想像に容易い。
私としても、長く離れてしまう前に気持ちを伝えようと思っていた。
けれど、この体調では難しい。話をするのは、彼の帰宅を待ってからになりそうだ。
「具合の悪い妻を、ひとりにするわけにはいかないだろ? どうせ心配で仕事なんて手につかないから、今日は在宅にした」
「でも……」
さらに言い募ろうとした私の頬に、彼がそっと手を添える。
「俺のことは気にしなくていい。紗季は早く回復することだけに集中して」
まだなにかを言おうとする私から、和也さんは手を離して一歩離れた。それから、ベッドで食事がしやすいように整え始める。
「ほら。少しでも食べた方がいい」
彼に譲る様子はまったくない。
それなら、これ以上の迷惑をかけないためにも早く元気になって安心させてあげるべきだ。
和也さんに手伝ってもらいながら、怠い体をなんとか起こす。
「食べさせてあげようか」
心配そうな顔に少しのいたずら心を混ぜて、和也さんが申し出る。
「そ、それくらいは、できるから」
「そう? それは残念」
わざとらしい口調でそう言ったかと思えば、すっと表情が真面目なものに変わる。
「辛かったら、隠さずに言うんだぞ」
真っすぐに私に向けられた彼の目には、私を案ずる色が滲んでいた。
椅子をベッドの脇に引き寄せた和也さんが、それに座ってこちらを見ている。その背後には、いつの間にか机が持ち込まれていた。
どうやら彼は、ここで仕事をしながら私を見守ってくれていたらしい。それを申し訳なく思うと同時に、うれしいとも感じた。
和也さんの視線を感じながら、なんとかおかゆを完食する。それから彼に差し出された薬を飲んで、再び体を横たえた。