だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
 体調が悪ければ不安にはなるものの、ひとりで乗りきるものだと私はすっかり慣れていたはず。
 それなのに、こうしてずっと和也さんが付き添ってくれたことで、自分の弱い部分が顔を出す。誰かの温もりがこんなにも安心できるものだと知ってしまえば、手放せなかった。

 くすりと笑った和也さんが、掴んでいた私の手を優しく剥がす。そして、両手で包み直した。

「た、体調不良の原因は疲労で、風邪じゃないからうつるようなものじゃないし。それに、ここのベッドはこんなに広くて。だから……」
「俺がいては、気が休まらないんじゃないか?」

 そんなことはないと、彼の方を見られないまま首を横に振る。

「それじゃあ、紗季が心配だから、一緒に眠らせてもらおうか」

 下手に出ている彼だけど、そばにいてほしいという私の願いをわかって言ってくれている。
 布団をめくって私を寝かせると、その隣に和也さんも体を横たえた。さすがに抱き寄せられはしなかったけれど、代わりに手をつないでくれる。

「早く元気になってくれよ。弱っている紗季を見ているのは、俺も辛い」
「ごめんね」
「いや、謝る必要はないから。ほら、寝られそうか?」

 布団をかけ直しながら、和也さんがサラリと頭をなでる。

「うん」

 つながれた手の温もりが、私を穏やかな気持ちにさせてくれる。

「ありがとう」

 そう告げながら、彼の手を握り返した。

 和也さんが出張から帰ってきたら、あなたを信じていると今度こそ伝える。そう心に決めながら瞼を閉じると、まだ怠さの残る体はすぐに眠りに落ちていった。
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