だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~

深まる絆

「体はもう本当に大丈夫なんだな?」

 これを聞かれるのは、いったい何回目になるだろうか。

「ばっちりだよ」

 金曜から続く発熱は日曜の夜には完全に下がり、ようやく体調が回復してきた。
 食欲も戻りちゃんと食べられる姿を見せたが、和也さんはまだまだ心配でならないらしい。

 そんなふうに気遣ってもらえるのは幸せだが、彼は責任のある立場の人だ。私ばかりに時間を割いて、仕事を疎かにさせてはいけない。

「万が一調子が悪くなるようなら、仕事を休んで病院に行くよ。どうにもならないときは、兄に知らせて来てもらうから大丈夫」
「……そうか」

 まだなにか言いたそうにしながら、和也さんは渋々うなずいた。

「それじゃあ、紗季。二週間ほど家を空けるから。なにかあったら、いつでも遠慮なく連絡をくれ」
「わかった」

 玄関先で、出張に向かう和也さんを見送る。

「お仕事、がんばってね」
「ああ。できるだけ早く帰ってくるから」

 私を抱き寄せて額に口づけた和也さんは、名残惜しそうな顔を覗かせながら玄関のドアを開ける。

「それじゃあ、行ってくる」
「行ってらっしゃい」

 パタリと閉まった扉を、しばらく見つめ続けていた。

「私も準備をしないと」

 名残惜しいのは私も同じだ。もしかしたら、彼以上にそう思っているのかもしれない。

 交際している時なんて一カ月以上会えなかったときもあったというのに、たった二週間の別れが寂しくて仕方がない。
 この三日間、彼はずっと私の傍にいてくれた。おかげで一緒にいるのがすっかり当たり前になってしまい、離れがたくなる。

「いけない。もうこんな時間」

 時計を見て、意外と時間が経っていたことに気づく。沈んだ気持ちを振り払い、慌てて出勤の用意をした。
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