迎えにきた強面消防士は双子とママに溺愛がダダ漏れです
 翌朝になってもやっぱりムウの食欲は回復せず、マンションから歩いて十分ほどのところにあるかかりつけの病院へ向かう準備をする。

 胸まで伸びたミルクティーベージュに染めた髪をひとまとめにして、グレーのロングTシャツにカーキのパーカーを羽織り、流行りのパールがついたデニムを穿く。歩きやすいように白のスニーカーを合わせて、全体的にカジュアルな雰囲気にした。

 ムウのキャリーケースの取っ手に、先日百円ショップで購入した茶色のベロア生地のリボンを結びつける。

「ムウちゃん、可愛くなったよ」

 そんなのどうでもいいと言うように、キャリーカートに入れられたムウは不機嫌な声で鳴いた。

 とても人気があるうえに予約をしていないので、少なくとも一時間は待つことになるだろう。

 病院で受付を済ませ、椅子に腰掛けて時間をやり過ごしていると、そう広くない待合室に背の高い男性が入ってきた。リュック型のキャリーバッグを背負っており、ドーム型の小窓からは猫の姿が見えた。

 あれ、いいな。私でも背負えそう。
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