迎えにきた強面消防士は双子とママに溺愛がダダ漏れです
「そうですね。行きましょうか」

 一分もかからない距離を寒さから逃れるために早足で歩く。山科さんから話を振ってこないので、こちらも無言だ。

 肌でぴりぴりと感じる居心地の悪さは、店内の空いている席について少し和らいだ。二人掛けのテーブル席でメニューを広げ、山科さんは温かいハーブティー、私はデミグラスソースのオムライスを注文する。

 水で口の中を整えてから、改めて正面に座る山科さんを眺める。

 光にあたると薄っすら茶色くなる肩まで伸びた黒髪は艶があり、白くてふわふわな肌と、血色のいいぷっくりとした唇とあいまって白雪姫みたいな雰囲気だ。

 ヒールのある靴を履いても背が私と変わらなかったので、おそらく百五十五センチくらい。

 少女のような顔立ちは私とは真逆で、守ってあげたくなる儚さを漂わせている。

 羨ましい。自分にはないものを兼ね備えている、こういう女の子に昔から憧れていた。

「私、橙吾の幼馴染です。桃花さんの話は、一応聞いています」

「あっ、そうなんですね」

 橙吾さんの身近な人だと知り、肩にのしかかっていた重みがすっと軽くなる。

「それで、橙吾がソウミヤホールディングスの御曹司というのは、もちろんご存知だと思うのですが」

 初めて耳にする事実に絶句する。

 ソウミヤホールディングスって、誰もが知っているあの大企業だよね。この世に同じ名前があってはならないほどの大きな会社だ。
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