迎えにきた強面消防士は双子とママに溺愛がダダ漏れです
「橙吾から生きがいである仕事を奪うなんて、できないですよね。好きならなおさら。私も同じだからわかります。ああ、よかった、本当に。小早川さんが橙吾の幸せを願って、別れてくれて」

「ちょっと待ってください。別れるなんて、私――」

「お礼にここのお代は払わせてくださいね。ありがとうございました」

 山科さんは一方的に言い放って、バッグを開けながら席を立つ。財布を取り出してお札を一枚テーブルに置くと、顔を合わせてから初めて見る満面の笑みを振り撒いた。

「多すぎます」

 注文したものを、もう一度頼めるほどの金額だ。

「それしか持っていないんです」

「私が払います。それと、まだ話は終わっていないです」

「えー? 小早川さんって、よくわからないこと言うんですね」

 それはこっちの台詞だ。なんなのこの人、滅茶苦茶じゃないの。

 訴えも虚しく、山科さんは最後までマイペースを貫いて去っていった。

 ひとりになり、残ったお札とオムライスを放心状態で見つめた。どのくらいそうしていただろう。隣の席に四人組の賑やかな女性たちが通されて、ようやく正常な意識が戻ってくる。
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