迎えにきた強面消防士は双子とママに溺愛がダダ漏れです
 休憩時間はあと十五分しかない。食べ物に罪はないのでオムライスを食べきり、山科さんが置いていったお札は綺麗に折り畳んで財布にしまう。

 橙吾さんとの話し合いの際に、本人に返してもらうようにお願いしよう。

 思い出すと胸が締め付けられて苦しくなるような内容だったけれど、橙吾さん本人から聞くまでは真に受けてはいけない。

 たった四カ月だろうと、私たちは信頼関係を築いてきたはずだもの。

 会計を済ませて店の外に出ると、白い糸のような静かな雨が空から降っていた。

 傘を持っていないので仕方なく小走りでポワッタビジューに向かう。しかし走り出してすぐに歩道の段差に足を引っかけて盛大に転んでしまった。

 デニムのパンツを穿いているので膝は多少守られたけれど、咄嗟についた手のひらは無防備だったのでかすり傷から血が滲んでいる。

 しまった。これじゃあ仕事に影響が出る。

 仕事と恋愛、どちらも自分の思うようにしたいと欲張ったから、罰があたったのかな。

 心が弱って、ありもしないことが脳裏をよぎる。

 込み上げた涙を抑えられない。雨で涙を誤魔化せたことだけが不幸中の幸いだった。
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