迎えにきた強面消防士は双子とママに溺愛がダダ漏れです
 結婚願望がないからこそ、遠距離恋愛も可能だと考えているとしか思えない。先ではなく今を見据えているところも憶測に後押しをする。

「年に一度や二度会えるか会えないか。そんな付き合いを私はできない。互いを縛りつけるメリットはない気がする」

「好きだから付き合う。それ以外の理由がどこにあるんだ」

 山科さんに会う前の私であれば、橙吾さんの言葉を素直に受け入れて喜び、彼の考えに共感を示せただろう。

 結婚はタイミングってよく言うけれど、こういうものなのかな。狂った歯車を軌道修正するのは難しい。

 まあ、私たちの間には結婚のけの字すら出ていないけれど。

「好きだけの気持ちでやっていけるほど、私たちは若くないし、築き上げたものも少ないよ」

「桃花、やめてくれ。どうしてそんなうしろ向きなんだ」

「ちゃんと前を向いている。お互いの幸せのために別れるべきだよ」

 声が震えた。橙吾さんに気づかれただろうか。

 深い溜め息をついた橙吾さんは、膝の上で両手を組んで俯いた。

 大きな掃き出し窓からは嫌になるほど眩い光が差し込んでいる。視界に入る範囲で雲はひとつもない。

 この部屋に来るのもこれで最後になるのか。短い間だったけれど思い出はたくさんあるし、一緒に暮らす別の世界線もあったのかもしれない現実が切なさを生んで、苦しみに喉が締めつけられる。
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