迎えにきた強面消防士は双子とママに溺愛がダダ漏れです
「俺も歩きなんだけど、方角が同じなら一緒に帰ろう」

「えっと……ポワッタビジューの方へ」

「一緒だ。行こうか」

 唐突な誘いだったが嫌な気持ちはほんの少しも抱かず、むしろまた話ができて心が浮き立つ。

 製菓学校時代の友人は同じような環境で忙しいし、それ以前の友人とは休みが合わず会えていない。だから日常的に会話をするのは五歳上の姉くらいだ。

 接客業とはいえ会話の内容は限られるし、私、人と接することに飢えていたのかも。

 何気ない会話でも楽しめている自分を客観的に見て、たまには息抜きに誰かと会うのも必要なのだろうな、という気づきがあった。

「桃花さん」と呼ばれたので、流れで私も「橙吾さん」と、下の名前で呼ぶことにした。

 私より六歳上の三十二歳だそうで、実家を出て猫一匹とマンションで生活をしているそうだ。

 猫は雄の三歳で、元々は実家でお迎えした子だったのだが、母親が猫アレルギーを発症し、くわえて喘息を患っていたので橙吾さんが引き取ったらしい。
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