迎えにきた強面消防士は双子とママに溺愛がダダ漏れです
「桃花さんは定休日以外にお休みはある?」

「シフト制なので決まった曜日ではないですけど、週休二日です」

「そうか。きちんと休めているのならよかった」

 橙吾さんの優しさに胸が温かくなる。他人にも寄り添える橙吾さんは消防士に適任なのだろう。業務について詳しく知らないけれど、そんなふうに思う。

「これ、話すか迷ったんだけど……」

 声の調子と共に歩調も落とした橙吾さんの横顔を眺めながら続きを待つ。次第に橙吾さんがまとう雰囲気が変わっていき、言葉では表現しがたい空気に緊張感を覚えた。

 なにを言われるのだろうと耳にまで響いてくるほどの拍動を感じていると、橙吾さんは足を止めて私と向き合った。

「桃花さん、小学六年生のとき、遊園地で事故に遭っているよね」

 驚きで一瞬頭が真っ白になった。

「遊園地のアトラクションに不具合が起きて、乗っている最中に急停止して、怪我人が多数出た」

 まるで物語の朗読をしているかのような落ち着いた口調だ。

「俺も乗っていたんだ」

「えっ」

 衝撃的な事実をすぐに受け入れられなくて頭が激しく混乱する。

 橙吾さんも、あの事故に……。

 十四年経った今でも、いまだにふとした瞬間にすさまじい情景が脳裏に浮かんだりする。しかしまだ十二歳で精神的に幼かった私は、激しいパニックを起こしていたので人の顔まで見ていない。

 六歳差だから橙吾さんは高校三年生だったはずだ。そこまで思考を巡らせてはっとする。
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