迎えにきた強面消防士は双子とママに溺愛がダダ漏れです
 正午になってからシャワーを浴びて身支度を整え、ポワッタビジューへ向かった。

 店内へ入ると、店員がひとりいて桃花さんの姿はない。

 もちろん会える確証はなかったし、その心づもりでいたのだけれど、できれば会いたかった。

 佐橋から頼まれているショートケーキ以外になにを買おうかとショーケースを眺める。商品名の下に簡単な説明が記載されているので、ケーキに詳しくない俺にとっては助かる。

 悩んでいると、自動扉が開いて別の客が立て続けに二組入ってきた。この前来たときも数名の客がいたし、人気店なのがうかがえる。

 店内の空気が賑やかになると、奥から颯爽と桃花さんが現れた。思わず動きを止めて彼女をじっと見つめる。

 桃花さんはすぐに俺に気づき、目を弓なりに細めて笑った。

 マスクをしていても感情がわかりやすく伝わるくらい表情が豊かで、普段強面ばかりに囲まれて働いている身にはこれだけで心が和らぐ。

 桃花さんに近づくと、透き通るような綺麗な瞳が俺を見つめた。普段緊張なんてしないのに何故だか身体が硬直する。

「こんにちは。またいらしてもらえて嬉しいです」

「ムウちゃんの風邪は治った?」

 くりっとした目を大きく開いたあと、桃花さんは首を上下に動かす。

「元気になりましたよ。同僚の方は?」

「退院したよ」

「それはよかったです」

 もっと話をしたいけれど、これ以上は彼女に迷惑がかかるだろう。ショートケーキとガトーショコラのふたつを頼んだ。
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