迎えにきた強面消防士は双子とママに溺愛がダダ漏れです
「私ばかり話してすみませんでした。橙吾さん聞き上手だから、つい」

 ひとり暮らしをしているマンションのエントランスにたどり着くと、桃花さんが眉尻を下げた。

「桃花さんについてもっと知りたいから、俺は嬉しいよ」

「私も橙吾さんのこと、知らないといけないのに」

「そのうちな」

 むくれた顔を作った桃花さんは、一拍置いておかしそうに笑った。自分でやって自分でツボにはまるなんて愉快な子だ。

 拗ねたような表情はもちろん可愛いし、ノリのよさが俺まで楽しい気持ちにしてくれる。彼女の明るさと柔軟性は魅力的だし、告白してからの僅かな時間でさらに好きになっている。

「風邪を引くといけないから、早く部屋に入って」

 カッコつけているけれど、本音はこれ以上一緒にいたら彼女に触れてしまいそうだから、安全な場所へ帰ってほしいだけ。
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