イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

 母がいなくなった。それは、別に悲しい事ではない。だから、現実に戻るのはさして難しい事ではなかった。

 まずは、今どうしても必要なお金を計算しないといけない。そして、アルバイトでこれから入ることが確定されている収入も一緒に把握しないと。

 けれど、現実はそう甘くない事もちゃんと分っている。何度も計算したところで、足りない金額が変わる事もないのだから。

 さて、どうしたものか。


「えっ、またバイト増やすの!?」

「そうだけど」

「えぇ……大丈夫? だって、居酒屋のバイトに、コンビニもだし、あとは……」


 私に話しかけてきたのは、私と同じ大学生の清水琳。入学時に彼女から声をかけてきてくれて、今では仲の良い親友だ。

 あのクソババアが借金をプレゼントしてくれちゃったおかげでこっちは大変なんだ。しかも結構な大金で、あのババアに引き抜かれていたのか通帳の中もすっからかん。幸いバイトの給料日前だったからよかったものの、大変なことになるところだった。

 これから光熱費などの支払いだってあるというのに……あぁ、先が思いやられる。


「あの、さ」


 と、私の顔色を見つつも改まった様子でそう言ってくる彼女を不思議がりつつも「何?」と答えると、とんでもないことが口から出てきた。


「もし、今すぐにでもお金が必要なら、いいバイト教えてあげよっか」

「いいバイト?」

「三時間で50万、ホテルレストランのディナー付き」

「……パパ活?」
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