幽霊姫は止まれない!
 令嬢の方から気になる名前が飛び出たことに驚きつつ、もう少し詳しく聞けないかと更に一歩彼らへと近寄る。ミック公爵令息からその名前が出たのなら、訓練の話でもしているのだろうと流すのだが、何故令嬢の方からわざわざオスキャルの名前が出るのだろうか。それがやたらと気になり、耳を傾けた――その時。

「――ァ」
「?」
「エヴァ様ァァッ!」
「ヒィッ!」

 私の耳に聞こえたのは、前方のミック公爵令息たちの会話ではなく、後方から凄い速さでブチギレながら走ってくるオスキャルの声だった。
「アンタって人はァ!」
 私がオスキャルを待たず尾行を開始したことに怒っているのだろう。確かに怒っても仕方ない。オスキャルからすれば、ねだられたものを買いに行っている間にまたも逃亡されたのだから。

(でもそんなに大声で呼んだらバレちゃうじゃない!)

 私の姿を確認したオスキャルがすごい速度で距離を詰めるのと同時に、彼の声に驚いた通行人たちからの注目が集まる。ミック公爵令息たちもなんだなんだとまさに振り向く瞬間で、もし気付かれれば尾行していたことがバレて今後の調査に影響がでるかもしれない。
「あ、あぁっ、もう!」
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