幽霊姫は止まれない!
 少し心配そうなオスキャルに小さく笑みが溢れる。
(着地の瞬間は確かに揺れたけど、オスキャルがしっかり抱き締めてくれていたものね)
 彼の膝でしっかり衝撃も逃がしながらの着地だったお陰で確かに揺れはしたが痛いところはない。それに。
「怖くはありませんでしたか?」
「全く!」
 オスキャルが私を落とすだなんて想像も出来ない。私は彼の腕の中にいれば安全なのだとそう信じているのだから。

 そうハッキリと答えた私は、どこまで彼が飛んだのかと辺りを見渡す。
 どうやら距離ではなく高さを優先したのか、先ほどいた通りから少しだけ離れた教会の屋根へと着地していた。この辺りで一番高い建物である。
「いい景色ね!」
「はぁ、図太いというかなんというか……」
「何か言ったかしら」
「いえ何も」
 話ながら先ほどまで自分たちがいた場所へと目を向ける。そこにはもうリック公爵令息たちはいなかった。

(あの令嬢、気になるわね)
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