幽霊姫は止まれない!
 もちろんソードマスターの中にはこっそりと叶わない恋をしている人だっているかもしれないし、そもそも結婚相手は自国の相手と決まっていても恋人関係まで厳密に管理されているわけではない。まぁもし子供ができればその子の所属がどこの国になるのかで揉めるだろうが、血の影響を強く受けると言われている魔力を持った人間が一国に偏らずどの国にも生まれていることを鑑みると、結局人の想いを規制することは出来ないという証拠だろう。

 だがオスキャルは令嬢に慣れていないし初心だしナルシスト――はまぁ事故みたいなものだったけれど。
 何より彼は誰よりも愛国心が強く忠臣だ。私の護衛騎士を迷わずその場で引き受けるくらいに。

 そんな彼が国の規則を破ったり抜け道を見つけて隣国へ恋人を作るだなんて想像もつかなかった。
 もちろん彼女の一方的な想いかもしれないけれど……でも、これは女の勘が言っている。
 何かよくわかんないけれど、何かを!

 ごくりと唾を呑んだ私が一歩一歩と彼女へと近付く。そしてとうとう目標の相手の横に立った時、私の存在に気付いたその令嬢がオスキャルから私へと視線を移した。
「ごきげんよう」
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