幽霊姫は止まれない!
 一人娘で年齢は私よりひとつ上の二十歳。貴族令嬢にしては珍しく、十六の成人を過ぎてもまだ婚約者がいない。一人娘であるがゆえに相手を選ぶのに慎重になっているのかと思っていたが、わざわざ隣国まで来て騎士の合同訓練を見ているのだから、この合同訓練する隣国の高位貴族の中に想い人がいて、婚約者を作ることを拒絶しているのかもしれない。
 一人娘の彼女は家を継がねばならず、隣国へ嫁ぐことはできないからだ。

 だが、本当に隣国貴族の令息に想いを向けているのだろうか。
 そう考えて首を捻る。
(普通に考えれば隣国の貴族令息よね。だってここは隣国なんだもの)
 しかし彼女の視線はオスキャルへと向けられていた──が、これに関しては教える側だから目についた、もしくは想い人を厳しく叱るオスキャルに苛立っている可能性もなくはない。だってオスキャルだし。
 それより自国の近衛騎士たちの可能性だってあるだろう。

 私がオスキャルの恋人としてついてきたように、彼らも恋人として彼女を連れてきた可能性もあるし、彼らに片想いしている可能性もある。
 何しろ何故か今回選ばれた近衛騎士たちは全員やたらと顔がいいのだ。
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