幽霊姫は止まれない!
 そう気付き、ショックを受けたはずの私の機嫌はコロッと直った、はずだったのだが、何故かまだ胸の奥がチクリと痛んだ。
 原因がわからず、きょとんとしてしまう。私は何にひっかっかてるのだろう?

 妖精姫の由来を不本意な状況で簡単に知ってしまったことだろうか。
 それとも──

『それは魔力がないからって意味かしら?』
『えぇ。そうよ』

 イェッタとしたこの会話がふっと脳裏を過る。私は、自分でも気付かないところで本当は魔力を持たずに生まれたことを引け目に感じていた?
(ううん、そんなはずはないわ)
 そこまで考え、静かに首を振る。魔力があれば確かにできることは増えるだろう。でも、魔力がなければ何もできないわけではない。
 たとえ魔力がなかったとしても、やりたいと思ったことをのびのびとなんでも挑戦する。もし母が生きていれば、私に魔力がないことを気にしたはずだ。

 ──会ったことのないお母様。でもきっと、お母様は私のことも愛してくれているはずだから。

 だから私は魔力なんかなくても幸せに、そして全力で生きるのだ。その考えに変わりはない。
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