幽霊姫は止まれない!

第三十四話 私は私として

 他の客たちは一定の距離を保ち様々な目で私たちを見ている。
 私の色と、公爵夫妻の対応で確信を持ち驚いている者。それでもなお疑惑の目を向ける者。突然のこの出来事に好奇の目を向ける者。
 そんな彼らには目もくれず、次に向かったのはイェッタの元だ。

「ごきげんよう、イェッタ。ミック公爵令息も、本日はお招きありがとう」
「こちらこそ、来ていただけて光栄です。やはり妖精姫の噂は本物だったようですね」
「ふふ、そういってもらえて嬉しいわ。あまり驚いてないようだけど、気付いていたのかしら?」
 愕然とした表情で固まるイェッタとは対照に物腰柔らかく微笑み頭を下げるミック公爵令息へそう聞くと、彼が少し苦笑しながら首を左右に振った。

「もちろん、と言えればよかったのですが。殿下の見目はこの間の庭園の時と何も変わっていないのに、お恥ずかしながら気付けませんでした」
(ま、姿を現したことのない末の姫が、自国ではなく突然隣国へ現れるなんてありえないものね)
 普通ならば多少変装をするところだが、堂々とそのままの色で現れただけでなく平民と偽りながらソードマスターの恋人を名乗る。
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