幽霊姫は止まれない!
 どうせ剣を持っていても、いざという時は役に立たないどころか、私の剣を奪われれば相手に武器を増やすことにもなる。
 もちろんそんな『いざという時』なんて日は来ないという前提ではあるが、それでも念には念をということだった。

(背はシャンと伸ばして、表情は常に無表情を貫くのよね)
 兄の後ろに控えながら、騎士の姿を思い出しつつそれっぽく振る舞う。今までオスキャルを一対一で、かつ間近に見てきたのだ。私とふたりきりの時は少し素が出るオスキャルだが、彼はそれ以外の場では誰よりも表情を消している。
 騎士というその姿を徹底しているところを思い出しながら、いつもなら私の一歩後ろに控えているはずのオスキャルを見上げた。
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