幽霊姫は止まれない!
 ただ目があっただけなのにポッと顔を赤らめる令嬢に思わず私の口角が上がった。

 そして微笑を浮かべたまま軽く手を振る。
「ヴァル!」
「ははっ、悪かったってオリバー」
 すぐさま叱るように偽名を呼んだのは当然オリバーことオスキャルだ。

 そんなオスキャルに軽く肩をあげ、ちぇっと唇を尖らせ前を向く。

「ヴァル様っていうのね」
「隣の銀髪の騎士様はオリバー様って言うんだわ」
 きゃあきゃあとまるで小鳥が囀るような可愛い会話をする彼女たちに私の口角はまた上がりそうになるが、オスキャルは相変わらず無表情のまま。
 徹底的に護衛の在り方を貫く彼に感心し、私も見習って表情を消す。

「真面目な表情も素敵!」
「あぁん、お近づきになりたいわ……どこの家門の方かしら」
(でも、悪い気しないわね)
 護衛中はもちろんオスキャルを見習うべきだが、もしどこかでまたすれ違った時は挨拶くらいしてみようかな。なんて考えてしまうのは、私に同年代の令嬢の友人が今までいなかったからかもしれないなんてそう思ったのだった。

 ◇◇◇

 そんなことを考えながら始まった護衛任務。
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