幽霊姫は止まれない!
「あぁん、メイルク様はいらっしゃらないのかしら?」
 彼女たちの声援の先が、兄だけではないのである。
(護衛騎士たちって思っていたよりずっと人気なのね)
 
 考えてみればそうかもしれない。王太子妃というたったひとつの枠を狙うのももちろん悪くないが、そんな彼の護衛騎士たちも当然優秀で安定した将来は約束されているようなもの。
 先日の隣国の時に同行してくれた若き近衛騎士たちの顔もやたらと整っている者たちばかりだったし、騎士の採用に顔はないはずだが、顔がいい兄の周りに顔がいい人間が集まるのはある意味不思議ではないのかもしれない。
 類は友を呼ぶというやつだ。多分。

「あの黒髪の騎士様も素敵!」
「ちょっと中世的なところが格好いいわ!」
(え、私?)

 冷静に状況を整理していた私の耳に飛び込んで来たのは私への声。今まで幽霊姫と蔑まれることはあったが、まさか黄色い声を貰える対象になれるなんて思っても見なかった私は内心少し浮かれてしまった。

(少しくらいいいわよね)
 サービスよ、サービス。なんて自分に言い聞かせ、声が聞こえた方へと顔を向ける。
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