幽霊姫は止まれない!
 訓練場とはいっても、私とオスキャルは見学だ。表向きは訓練している王太子殿下を守るために待機、ということになっているが、単純に私は訓練に参加なんてしたらその弱さゆえに一瞬で偽物だとバレるし、オスキャルも参加したらその強さゆえに逆にバレるからである。

 だが、訓練中の兄の元に聖女なんて現れるはずもなく、完全に暇を持て余していた私はオスキャルの目を盗んで見学に来ていた令嬢に手を振った。
 私が手を振ると、何人かの令嬢が「きゃあ!」と顔を赤らめ両手で口元を押さえる。
(かーわいい)
 そんな姿にふふっと思わず笑みを溢した私は、調子に乗ってウインクをオマケした。
 大好評。

(楽しいわね)
 これがモテるということなのか、と胸の高鳴りを感じる。
 更に調子に乗った私は、兄の後ろに控えながら時には笑顔を、時には真面目な表情を、そして更には流し目を向ける日々がしばらく続いた、その結果。

「今日は三十一通か」
「え、エヴァ様? あとその手紙って」
「ははっ、オリバー。エヴァって誰のことを言っているんだ? それとこれはラブレターだよ。ふふ、困ったな」
「エヴァ様!?」
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