幽霊姫は止まれない!
「専属護衛騎士って、花の棘からも護衛してくれるのね」
「っ、怪我されたら俺が怒られるってだけで……!」
「あはは、じゃあそういうことにしておくわ」
 私の指摘に耳をカァッと赤く染めたオスキャル。その様子に思わず笑みを溢しながら、薔薇の花を五本ほど指さすと、すかさず摘んで丁寧に薔薇の棘を取ってから渡してくれた。

(そこまで過保護にしなくてもいいのに)
 護衛騎士の仕事はあくまでも護衛をすることだ。その対象は敵意を持つ相手からの敵意や事故などのトラブル、魔物などの対処も含まれるが花の棘取りまでは流石に含まれない。
 私が勝手に花を摘み、その花で小さな傷を負ってもそれは自己責任だ。

 それでもオスキャルはそんな小さな自業自得からも私を守ってくれようとしているのだと思うと、胸の奥がほわりと温かくてくすぐったい。

「ねぇ、ちょっとこっち向いてくれない?」
「え?」
 私がそう言うと、きょとんとした顔を向けられる。花へと視線を向けていたオスキャルが振り向くと、そんな彼の耳にかけるように小さめの薔薇の花を一本挿した。
 みるみる彼のその瞳が驚いて見開かれる様に、私はつい小さく吹き出してしまう。
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