幽霊姫は止まれない!
 もちろん私は決して楽しんでいるわけではない。断じて違うんだと自分に言い聞かせつつ、私を見かけた令嬢たちに手を振ると、黄色い歓声があがった。
 だが、本命からはあまりいい反応はない。

「そもそも軽くあしらわれてる気がするのよね」
 訓練場近くの物陰に、お行儀悪く座り込んだ私とオスキャル。
 キョロキョロと周りに私たちしかいないことを確認し、口調を戻しつつはぁ、とため息を吐いた。

(人気ある方だと思うんだけどな)

 残念ながら実力はないので、訓練で格好よくキメる、なんてことはできないが、兄から借りた近衛騎士団の制服効果で『パッと見は優男なのに実は強い』というギャップの演出に成功した私は自分で言うのもアレだがかなりモテている。

 が、本命だけは反応がイマイチなことに頭を悩ませていた。

「好みのタイプじゃない、とか?」
「うーん、ですが結婚相手として望んでいる王太子殿下が好みのタイプなら、エヴァ様はいい線いってると思うんですけどね」
「兄妹だからね」
(でも、実際あまり相手にされていないのよね)

 そもそも聖女の好みは兄なのだろうか。兄を選んだのは、預言によるものだったはず。
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