幽霊姫は止まれない!

第五十五話 彼を内側へ、というのは厳しいけれど

(その可能性を考えてお兄様はすぐ様受け入れたと思うのよね)

 今思えば、私が彼女関わることにいい顔をしなかった兄の顔を思い出す。
 兄はきっとその危険性を考え、自らの懐に入れて監視することで民を守る決断をしたのだ。他の王族を含めて、自分自身すらも危険に晒す行為ではあるが、王城の中ならば他の誰かを忍ばせることも何か細工をすることも難しいし、何より民を最優先に考えればこの方法が最適であるのも確かだった。

 私にはオスキャルがいるし、姉たちはそれぞれ能力が強く、もちろん護衛騎士もつけている。聖女には護衛と称して自身の息のかかった近衛騎士をつけて行動を見張っているのだろう。
 
 彼女の方も、ぎっくり腰で受け入れられるとは思っていなかったはずなので動くに動けず、こそこそと娼館に通って指示を待っているのだ。

「きっと彼女の本当の能力は耳じゃないかしら」
「ブランカ殿下と同じということでしょうか?」
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