幽霊姫は止まれない!
「同じとまでは言わないけどね。でもブランカ姉様のように魔力で聴力を強化できるのなら、誰かがぎっくり腰で苦しんでいることも気付けるし、私たちが娼館に行った時に先に逃げることもできたのよ」
「ひえっ」

 あの日の悪夢を思い出したのか、オスキャルが小さな悲鳴をあげる。おいソードマスター。相手は自分より弱い人間だぞ……というツッコミは彼の悲壮な表情を見て口にするのをやめた。
 トラウマになっているらしい。

(聴力を強化しただけだから、きっとヴァルとオスカーの状態の私たちが警戒されないんだわ)

 あの時娼館まで追って来た二人組だと気付いてないのだ。だって部屋に入る前まで私は、オスカーとしてではなくエーヴァファリンとしてオスキャルと会話していたのだから。
 私の全力の口説きが相手にされていないのは、もしかしたらあの時娼館に訪れたふたり組だとバレているからかと思ったがそうじゃないのならむしろ好都合。今の口説くスタンスが効かないのは彼女の娼婦として男を手玉に取る能力の方が上だったというだけだ。

(それならまだまだやりようはある)

「決めたわ、オスキャル」
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