幽霊姫は止まれない!
「えっ、うわー。また俺めちゃくちゃ嫌な予感がするんですけど」
「大丈夫よ、実行は私がするから」
「もっと不安なんですけど」
「失礼ね! ちょっと彼女の足元に縋りついて一夜の情けを懇願するだけよ」
「はぁ!? 足元にってエヴァ様!?」

 私の発言を聞いたオスキャルが驚愕で目を見開くが、私はそんな彼のショックを無視してにこりと笑った。
 残念ながら私にはプライドも羞恥心もないのだ。もしあれば『幽霊姫』なんてあだ名を受け入れているはずもないのだから。

「そしてそれでもダメそうなら最終手段も考えてるわ。とにかく彼女とふたりきりになって、彼女の真意を聞き出したいの」
 もう兄の結婚相手としての真意を探るだけではダメなのだ。クーデターの可能性が出てきてしまったのだ。
 
(それを知るには聖女の仮面を被っている状態ではダメよ)
 ──だから。
 
「娼婦の彼女との対面、行くわよ!」
「ほら! 嫌な予感が的中したぁっ」

 思い切り頭を抱えるオスキャルの腕を取って、私は元気に聖女を探して歩き出したのだった。

 ◇◇◇
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