幽霊姫は止まれない!
 エヴァ様の言うことも正しいのでそこには口をつぐみつつ、だが俺はこれだけは、と再度娼館通いの件だけはと言葉を重ねた。

「でも、娼館とか本当に俺は行ったことないので!」
「えー」
「だからなんでそんなに疑うんですかっ」

 全然信じようとしてくれないエヴァ様に拗ねそうになりつつ、鼻を摘まんだ手を離すと、どうやらもう血は止まっているようで安心する。

「だって本当に詳しかったんだもん……」
「? だからそれは騎士仲間に聞いただけで俺自身は詳しくないですよ。というか詳しかったらあんなバケモ……娼婦と相対する前にオーラくらい纏ってますって」
「いや、それはそれでどうなのよ」
「とにかく、それくらいするって話です」

 流石にバケモノに相対したと思うくらいの恐怖は味わったが、相手はあくまでもそういう職業の一般人。
 職務を全うすべく頑張っている相手にオーラを纏うだなんて騎士としてはあるまじき暴挙であるのは間違いないので、呆れた顔のエヴァ様は正しいだろう。

 だがここまで疑われるのは正しくない、と主君に対しそう思った俺は、ムスッと唇を尖らせて彼女の方を見た。
 
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