幽霊姫は止まれない!
 とは言え当然、絶賛片想いを拗らせている俺がわざわざそんな変な場所へ行くわけもなく──いや、もしエヴァ様が相手だと言われれば当然ちゅうちゅうする方でもちゅうちゅうされる方でも魅力的ではあるが──

「ちょっと。鼻血出てるけど大丈夫なの」
「……失礼しました、煩悩が少々」
「そ、そのようね」

 完全に引いた顔をされたお陰で冷静な思考を取り戻した俺は、血を止めるべく鼻をギュッと摘まみながら彼女の方へと視線を戻す。

「何度も言いますが、俺は行ったことありません。興味もないですから」
「でも、やたらと詳しかったじゃない」
「それは騎士仲間の間で少し話題になったことがあるからで」
「ほら! やっぱりみんな興味があるんじゃない!」
「俺をあいつらと一緒にしないでくれます!? というかエヴァ様も見たでしょ、あのおぞましい化け物を!」
「いや、それは流石に酷すぎるでしょ」

 キッパリと否定したつもりが余計なことを言ったせいか、呆れた顔をされた。納得できない。

 だがまぁ、確かに俺にトラウマを植え付けた一夜ではあったが、相手は一応仕事として応対してくれようとしたのだ。
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