幽霊姫は止まれない!
 俺が冷静にそう指摘すると、一瞬驚いたエヴァ様が今度はどこか不満気な顔になる。何故だ。護衛騎士として当然の主張だと思うんだが。

「大体娼館なんて何するところかわかってんですか? ナニですよ!?」
「わかってるわよ、ちゅうちゅうでしょ」
「知識が偏ってる!」
「それに買う方なんだからいいじゃない」

 買われる側なんて想像すら許されないと頭痛がした俺は、その前に彼女の口から出たちゅうちゅうという単語ごと抹消すべく頭を左右に大きく振った。
  
(本当になんでいつもいつもこの人は!)

 どれだけ俺を翻弄すれば気が済むのか。
 最近なんて、困ってる俺を見るのを若干楽しんでいる節すらある。

 酷い主君を持ってしまったと頭を抱えたくなったが、それでも、この間他の誰でもない彼女自身に対抗してプレゼントした捨てられる運命だった薔薇の花を、律儀に部屋へ飾ってくれていることを知ってしまったせいで嫌いになれない。

 むしろどんどん沼に引きずり込まれているといっても過言ではないだろう。

(どうせ俺のこの葛藤も気付かないんだよな)
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