幽霊姫は止まれない!
「まぁ、そりゃそうでしょーよ。騎士ヴァルとしてめちゃくちゃ私を口説いてきてたもの」
「それも仮の姿だわ!」
「えぇ、今ネタバラシしたものね。でも……そうね。確かに間違えてたかも」
「でっしょ!?」

 うんうんと頷いた聖女に思わず明るい声を出す。そんな私たちを見たオスキャルは相変わらずの呆れ顔だ。
 だが、このある意味固定された私たちの表情を崩すような爆弾発言を聖女が投げた。

「姫様ってば、ヤキモチを焼いちゃったのね」
「「ヤ……?」」
 ヤキモチ、と言われた私がそろっとオスキャルの方を向くと、何故かオスキャルもそろっとこちへ顔を向ける。一瞬戸惑いのまま沈黙した私たちだが、ふたりともそのまま真顔になった。

「違うわよ。私たちはヤキモチを焼くような間柄じゃないわ」
(だって私は、いつか必ず王族として政略的な結婚をするのだもの)
 そしてそれは当然オスキャルも理解しているのだろう、彼もその場で何も言わない。
 どうやら私たちが慌てふためくと思っていたのだろう。私たちの反応を見て、聖女が少しつまらなさそうな顔をした。
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