幽霊姫は止まれない!

第六十三話 偽善的の、その理由

(革命が絶対の正義と思っているタイプ……にしては、偽善的すぎるわよね)

「そうなの。だから娼館で再会した時、雰囲気が変わっていて驚いたわ」
「そもそも貴女の孤児院で病気が発生したところは偶然だったの?」
「確かに、そこから仕組まれてる可能性はなかったんでしょうか」
「ないと思うわ。この流行り病は森の向こうから流れてきたらしくて、孤児院で発生したのは偶然だったみたい。というかむしろ」
 一瞬言葉を区切り、考え込むような仕草をする彼女を怪訝に思った。

「むしろ、誰かのための薬をくれたのよ」
「誰かの?」
「そう。薬はまた作ればいいからって譲ってくれたの。まさしく救世主ってやつだったわ」
 また作れば、ということは確かに善意だったのだろう。それなのに手のひらを反すように流行り病を盾にして聖女の前に再び現れたのはなぜなのか。

「一か月くらいした時に突然娼館へ現れたの。恩を返せ、と言ってたわ。でも、何か望みがあるというより向ける場所のわからない怒りを滲ませるみたいだった」
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