幽霊姫は止まれない!
 流石に王家の紋章の入った馬車で動くと注目を集めすぎてしまうため、城下町でも馴染むような少し地味な馬車を選んだ結果、いつもよりかなり車内が狭くなってしまっている。一応は敵側である聖女と隣り合わせ、また向かい合わせで座らせるわけにはいかないというオスキャルの主張の元、私の隣にはオスキャル、そしてオスキャルの向かいに聖女が座っていた。私からみれば斜め向かい、というやつである。

 そんな狭い車内にとっくに成人した三人が座っているとなればなかなかに窮屈だ。だが、それゆえにオスキャルがいつもより近く、そのことが今は心強い。聖女の前だが、聖女こそ性女という男女のプロなので特に何も言ってこないだろうと、私は少しだけオスキャルの方にもたれかかる。

「王家だと思う?」
「それは……」
「私かもしれないわよ。薬を私たちが貰わなかったら、きっと今こんなことになってないし」
「どうかしら」
 どこか私を励ますように言葉を重ねる聖女に苦笑してしまう。
 きっと彼女たちを恨んでいることはないだろう。もし恨んでいるならば、もっと効率のいいやり方があるからだ。

「もし俺なら」
「?」
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