幽霊姫は止まれない!
 淡いピンクの髪にアメジストのような紫の瞳はまさに王族特有の色。けれど王族ならば必ず持って生まれるという魔力を、残念ながら私は持っていなかった。
 悲劇、と言われる理由はそれだけではない。

 四人兄妹の末っ子である私の出産時に、この国の王妃である母が亡くなったのだ。
 姫の誕生であり、王妃の崩御。
 喜ばしい日が一瞬で暗転し、国中が悲しみに暮れたと聞く。

 突然母親を奪った形になる私を、兄や姉が恨まなかったことは幸いだった。それは母の愛を知ることのない末の妹に対する同情なのか、それとも魔力を持たずに生まれた王族への憐れみなのか。

「魔力がない王族なんて、笑われて当然だわ」
(王族特有の色を持って生まれなければ、きっと出生すら怪しまれたはずだもの)

 魔力を持たなかったことと関係しているのかはわからないが、人より体の弱かった私はいつも大事な日に熱を出し表舞台へ立つことが出来ないまま幼少期を過ごした。
 家族は寝込んでばかりの私でも可愛がってくれたが、王族が人前にも出ずに引きこもってばかりというのは外聞が悪い。それも王妃の命と引き換えに生まれた末姫ならば尚更だった。
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