幽霊姫は止まれない!

第七十三話 手紙を読んで

(私の声、震えてなかったかしら)

 例え震えていたとしても、彼女の気持ちが彼に届いていればいいなとそう思いながら、私は静かにその部屋から出る。
 扉の外にはオスキャルと聖女が待っていてくれていた。

「オスキャル、体の調子は?」
「俺は問題ありません。それよりエヴァ様こそ……ッ」
「私も問題ないのよね。もしかしてあの薬、少量でも効果があるのかしら」
 ちらりと聖女の方へ視線を向けると高速で顔を左右に振っている。
 どうやら彼女にもわからないらしい。

 暫くすると部屋からエルフが出てくる。
 さっきまであんなに泣いていたとは思えないほど平然とした表情で現れた彼だが、充血した目が泣いたことを証明していた。
 そのことを見て見ぬふりをした私は、改めてエルフとまっすぐに向き合う。

「もう一度言うわ。貴方が望む罰を、このリンディ国第三王女、エーヴァファリン・リンディが受けましょう。だからお願い、未来の罪なき命を守るための力を貸して」
「……具体的には?」
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