幽霊姫は止まれない!
「いつかはわからないけれど、必ず流行り病は我が国も襲うでしょう。だからその時のために薬を作って欲しい。毒草を自生させるわけにはいかないから──そうね、王城離れの裏庭か、どこかに専用のスペースを用意してそこで育てるわ」
 三か月後、という決まった日の災厄はきっともう来ないだろう。それでも徐々にこの病が国をいつか襲うことが目に見えていた。

「ここだ」
「?」
「この家の裏庭で育てる。ここまで深く誰かが入ってくるとは思えないが、私の魔力で防御壁を張り迷い込んだものが触らないように注意しよう」
「えぇ。それでいいわ」
 彼の提案に私が頷くと少し驚いたように目が見開かれる。

「いいのか?」
「頼んでいるのはこちら側よ。条件を飲むのは当然のこと。でもエルフの力を疑っているわけではないけれど、一応防御壁は定期的に確認させてもらうけど」
「わかった」
 素直にそう約束して貰えたことに安堵した。ホッと胸をなでおろしていると、少し怪訝そうな視線が向けられる。
 
「私は構わないが、お前の一存で決めていいのか?」
「私も王族だから──って言いたいところだけど、これ」
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