幽霊姫は止まれない!
 そう言いながら私が一枚の紙を取り出す。その用紙には、この土地の権限を一次的に私が代行するということが書かれていた。

「ちゃんと事前に許可は貰ってきていたのよ。断られることも想定していたから」
「まさか昨日準備って言ってたのって!」
「そ。お兄様とお父様に許可を貰う時間が必要だったの」
 驚きの声をあげる聖女にそう答えると、何故か呆れたような顔を向けられる。心外だ。

「それで、罰はどうする?」
「エヴァ様!」
「約束したのは私よ。だから黙っていて、オスキャル」
「罰、か。ならばお前の力で私の罪を帳消しにしてもらおう」
「……あら。そんなことでいいの? というかそもそも貴方に罪を問うつもりなんてなかったけど」
 王族を謀り、偽物の聖女を仕立てて潜り込ませたのだ。国家への反逆行為といっても過言ではないが、結果を見れば彼は国のために今後働くことになる。
 病原菌の入った瓶が割れたことで私が感染したことも、王族へ危害を加えたと受け取られれば大逆罪になるが、逆にその瓶が割れたことで彼が〝病原菌を作った〟という証拠がなくなったのだ。
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