幽霊姫は止まれない!
 部屋に入ると温かい料理が並べられており、赤子と一緒に食事を取る。

「メイル」
「なぁに?」

 いつしか私は赤子を名前で呼ぶようになった。
 赤子だと思っている反面、ちゃんと赤子をレディだと思うようにもなっていた。

 彼女との関係に名前が欲しいと思ったのもその頃だった。

「私と、番ってくれないか」

 そう口にしたのは、並んで夕飯の食器を洗っている時だった。どうしてそのタイミングだったのかはわからない。それでも伝えたいと思ったことが、そのまま言葉になり溢れ出したのだ。

 私の言葉を聞いた彼女は泣きながら飛びつき、『よく飛びついてくるな』と思いながら洗っているお皿を落とさないように気を配りつつ彼女を受け止めたことを昨日のことのように覚えている。

 人間とエルフは一見似ているようだが、全然違う。
 それは寿命だけでなく、体の構成も違うのだ。別の種族である私たちの間では子はなせない。

 だがそのことを彼女は気にしなかった。
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