幽霊姫は止まれない!
 だって、同じ想いだから受け入れたのだとしても、彼は私の信念を知っている。いつか外交カードとして誰かに嫁ぐつもりだと散々言って来たのだ。それを突然変えてしまったら、彼も私が自分の気持ちを無視して受け入れたのだと感じてしまうのではないだろうか。
 そう思えば思うほど、前にも後ろにも進めない。

 ここ、お悩み相談室じゃないんだけどぉ、なんて鼻を鳴らす預言の聖女もとい夜闇の館のナンバーワン娼婦・メイリアンが呆れ顔を向ける。
 ちなみに彼女とお兄様との結婚話は当然のようになかったことになったし、元々の元凶であるエルフのアルフォードは、今では王家公認の特別薬師としてあの毒草だけでなく色々な薬を作ってくれていた。

(これでいつリンディ国に流行り病が来ても対応できる……のは、良かったんだけど)
 その対価が、まさかの認めたくなかった気持ちの暴露である。

「……やってくれるわ」
 そんなことを呟き、私ははあぁ、と深い溜め息を吐いたのだった。
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