幽霊姫は止まれない!
 とんでもない子供に遭遇してしまった。こんなに居心地悪くなるなら、大人しく騎士団の訓練を見学しておけば良かったかもしれない。

「だから、お母様がどうやって子育てをして、愛情を注ぐのか、本当の意味ではわからないの。だけど、楽しいことをいっぱい経験したら、それを伝えることはできると思わない?」
「え? えぇっと」
「いつか生まれた自分の子供に、『私は母の愛を知らない』とただ告げるのではなく、色んな場所で色んな愛に触れて、『こんな愛もあるのよ』って教えてあげるの!」

 俺からすれば全く笑えないが、ふふ、と笑った彼女は本当にそう思い、母親がいないことを気にしていないようだ。
 ──いや、母親がいないことを、〝ちゃんと理解している〟のだろう。

「きっと母親を知らない、母親がいない親って言われると思うけれど、他に私はこんなことも知ってるのよって伝えてあげるの。最後に結婚して子供を産むってことは一緒でも、どういう経験をしてそこにたどり着いたかによっては全然違うと思わない!?」
「それは……確かに、そうかも」
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