幽霊姫は止まれない!
「お母様だって、私がうじうじしているよりいっぱい色んな経験をして強くなった方が喜ぶはずだわ!」
 
 確かに彼女の言う通り、騎士になるという結果が同じだとしても、騎士になるまでの過程が違えば全然違うかもしれない。
 嫌々騎士になるのと、騎士になりたくてなるのとでは訓練への身の入り方も違うし、守りたい人がいる騎士といない騎士では最後の踏ん張りも違うだろう。

 そして優しさに沢山触れて育った騎士は、優しい騎士になるのかもしれない。
 
 そこまで考え、気付けば俺は彼女の言葉に素直に頷いていた。

「──確かに、君に比べたら俺の悩みなんてちっぽけかもね」
 それは決してひねくれたような気持ちで発したのではなく、ただ本当に自分の悩みがちっぽけに感じたから出た言葉だった。

 だが、俺のその言葉を聞いた彼女は、さっきまでの明るい表情とはうってかわり、ギロッと目をつり上げる。

「あら。その考えは嫌いよ!」
「えぇえー」
「あなたの悩みの大きさは自分で決めなさい」
「俺が、自分で悩みの大きさを?」
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