幽霊姫は止まれない!
「評判の悪い、何もできない幽霊姫の護衛でいる必要はないわ。これからはその力を国のために使いなさい。私なんかの依頼を受ける必要なんて最初からなかったの」
「どこまで鈍いんですか! 俺は! エヴァ様だから! 受けたんです!」
 彼女の言葉を遮り彼女に怒鳴りつけるように、気付けば俺は声を荒げていた。

 不敬どころではなく、今すぐ捕まってもおかしくない。そうわかっているのに、溢れた言葉を止められない。
 
「ずっと貴女だけが特別だったから! 好きだったから!」
 
 口にすべきではないと改めて決めたその言葉すら簡単に零れ、想いを暴力のように彼女にぶつける。
 こんなつもりはなかったのに、俺の一番も唯一も彼女だったのに。

「……もう、いいです。俺だってもう、あなたの護衛ではいられない」
 その言葉が本心だったのかは、言った俺すらもわからなかった。

 傍にいたい、でもいたくない。
 俺は言い逃げするように彼女に背を向け、ひとり目的もなくただ歩く。

 エヴァ様は、追いかけてはきてくれなかった。
(当たり前だ)
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