幽霊姫は止まれない!
 最愛の相手を喪った彼と同じだと言うのはもしかしたら失礼なのかもしれないが、それでも俺には、それと同じくらい苦しい言葉だった。

「……護衛を、変えるって」
 喉がひくつかせながら、なんとかそれだけを発する。その言葉を聞いたエヴァ様は、俺が聞いていたことに気付いたのか少し気まずそうに目を逸らした。

「あー。そうね、私ももう十九だし、そろそろ色々考える時期が来たと言うか」
 エヴァ様の言葉を黙って聞く。心臓が痛いくらい跳ねていた。
 心なしか足元から重い何かが絡みついてくるように全身が重たい。

「それに、オスキャルの」
「俺の?」
「オスキャルの幸せも考えなくちゃなって思ったのよ」
 そして続いた言葉に一気に頭まで血がのぼる。

 俺の幸せってなんだ。
 俺の幸せは、エヴァ様の側にいることだと知っているくせに。

 唯一、なんて甘い言葉で縛ったのに、勝手に決めつけた『幸せ』で俺を捨てようとしているのだ。

「だから、オスキャルはこれからソードマスターとして」
 ソードマスターとして?
 俺がソードマスターになったのは、全て、全てあなたの側にいるためだったのに?
< 490 / 570 >

この作品をシェア

pagetop