幽霊姫は止まれない!

第九話 これが求めた解毒薬

「こっち! こっちよ!」
 声を張り上げながら手を叩きゴーレムへアピールする。そのつぶらすぎる目では私を本当に認識したかはわからなかったが、私の声を聞いたあとのゴーレムの一歩が明らかに私の方へと向いたのを確認し、私は再び方向転換してゴーレムから遠ざかった。
「オスキャル! 今よーっ!」
 ゴーレムの注意を私へと向ければオスキャルが空中で攻撃を加えられることはない。それに私は。
「あぁッ、もう!」
 苛立ったようなオスキャルの声を聞きながら、思わず口角が上がる。
 私は、オスキャルが花を摘んだあとで絶対私を助けてくれると信じているのだ。

 ドシン、ドシンとまっすぐ向かってくるゴーレムの足音がどんどん近付く。さっき簡単にゴーレムを撒いたのは、あくまでもオスキャルの能力があったからだったのだろう。
(動きが遅いとはいえ、流石に私よりは早いのね)
 想像以上に真後ろに迫る気配に焦りはしたが、怖くはなかった。
「これ壊して後で怒られたらエヴァ様が謝るんですよ!」
「あははっ、王族はそんなに簡単に頭は下げちゃダメって知らないの!?」
「悪いことをしたなら謝って、くだ、さぁいッ!」
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