幽霊姫は止まれない!
 そして私はこの程度では傷付かない。それなのに、こうやって妹がもし傷付いたら、と言葉を濁してしまうのだろう。

「確かに、お姉様たちは気にしそうですね」
 姉たちも魔力のない私を可愛がってくれている。だからこそ、逆に魔力という存在の有無に敏感だ。過剰に反応するとわかっているのに、魔力の少ない相手に嫁ぎ、妻の義務として子を成すことを考えるとなると、夫婦ともに悪影響を及ぼしかねない。

「ちなみにサイラス様はどれくらいの魔力をお持ちなのですか?」
「僅かにある、程度だな。特に何もできないからとそもそも魔力を増やす努力もしていないから、言葉通り、ぶっちゃけ何もできないはずだ」
「まぁ」
 私と一緒。なんていえば相手に失礼かもしれないが、それでもその兄の答えは『魔力のない王族』の『私でもいい』と言っているようでありがたい事実だった。

 二十四歳ということは、私とは五歳差。
 魔力を持たない王族である私は、結婚後に子が生まれたとして、その子にどの程度の魔力が備わるか分からない。だからこそ、跡継ぎを求められない高齢の王や、公的な役割を終えた者の後妻として嫁ぐしかない──そう覚悟していた。
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