幽霊姫は止まれない!
(確か、二年の留学期間に知り合われて意気投合したと聞いているけれど)

「エヴァはオルコットのことをどこまで知っている?」
「どこまで、と言われましても。リンディに隣接する国のひとつであることと、資源が豊かだということ。我が国とは貿易を盛んにおこなっていることくらいですわ」
「そして実は、誰しもの魔力が少ない国でもあるんだ」
「魔力が!」
 驚きのあまり思わず立ち上がりそうになるのをグッと堪える。だが、私も手にしたカップから動揺で紅茶を零しそうな気がしたので、気付かれないよう注意しつつ手から離した。

「オルコットは王族の魔力もそこまで多くないんだ。だからこそ軍事力の強化を狙うのではなく、智をもって世界と渡り合い、交易と外交の妙で国を栄えさせてきた」
「知恵の国、ということですね」
「あぁ。知略と交渉術でひとつの大国になった国でもある。だが、やはりまだ魔力を重んじる国は多い。だから私と親しくなったのだが……」
 少し言葉尻を濁した兄に苦笑する。

(なるほど、王族なのに魔力を持っていない『私』という話題でサイラス様と親しくなったのね)
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