幽霊姫は止まれない!
 近衛騎士団は主に王族の警備を担い、王族の居住区画の警備もしている。第二騎士団と第三騎士団に優劣はないが、騎士の先鋭とされるのが近衛騎士団だ。

 だからこそソードマスターであるオスキャルも近衛騎士団に入る資格は当然あったのだが、彼が選んだのは第三騎士団。
 私の護衛をもう二度としない、という意思からその選択をしたのかも、なんて考えると、クビにしたのは自分なのに胸が重く苦しくなる。

(近衛騎士団に入れば私の護衛をすることはあるだろうし、第二騎士団でも可能性はある。でも第三騎士団なら、私と直接関わることはないものね)
 オスキャルから直接そうだと言われたわけではないのに、うじうじとした答えが自分の中で巡り俯いていると、私の顔にふっと影が射した。
 
「エヴァ?」
「えっ。ごめんなさい、一瞬考え事を」
 完全に自分の思考に潜り込んでいてサイラスのことを放置してしまっていたと気付き、サッと青ざめる。だがサイラスはそんな私に嫌な顔はせず、柔らかく微笑むだけ。

「全然いいよ」
 責める言葉も言わず、常に一定の穏やかさを保つ彼に、私の口から自然と声が漏れた。
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