幽霊姫は止まれない!
「どうして、そんなに優しくいられるんですか?」
 そんな私の質問にきょとんとした彼が、今度はプッと小さく吹き出す。顔をくしゃっと歪めて笑う彼は少し幼く見え、私も釣られて口角が上がった。

「ふふっ、優しいつもりはないけどなぁ。俺の中で、怒るほどのことじゃなかっただけじゃない?」
「怒るほどの?」
「悩みもなく、考えることもない人間なんていないからね」
「それは……」
「考えることを放棄してる人ももちろんいるとは思うけど。そういう人よりむしろ好感度高くない?」
「そう、かもしれません」

 まさか話を聞いてない状況をこんなに好意的に解釈することができるとは。
 その考え方は私の中にはなく、だが王族という彼だからこそ納得のできる解釈でもあった。
 
「俺は全部任されるより、一緒に悩んだり考えたりしてくれる子の方が好きなんだよね。というわけで、どうかな?」
「え? どうって」
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