幽霊姫は止まれない!

第九十四話 それはつまり、メリットだ

 幽霊姫という蔑みを受け入れて得られる自由。結婚までの自由だと割りきっていたけれど。

「幽霊で、いいんですか?」
「楽しいなら幽霊でもいいんじゃない? 視察とかも行きやすいよね」
「それは、その通りですが」
「あ。その口振り、散々遊び回ったな?」
「ぅぐ」

 私の体をくるりと回し、そして戻ってきた私を抱き止めるようにして再びステップを始める彼は、悪戯を企むようにくつくつと笑っている。

(オスキャルとは、違う笑みだわ)

 こういう時のオスキャルは最初に叱り、そして心配し、最後に困ったように小さく笑うのだ。ダンスをしながらか会場を見渡す。伯爵家の令息でもある彼だが、今日の夜会に参加はしていないようだった。
(すぐにいないとわかってしまう自分が女々しいわ)
 
「……てのはどうかな」
(確か元々所属していた王城第三騎士団へ戻ったのよね。ということは今頃は城外の警備かしら)
 第三騎士団は主に王城の警備を担い、第二騎士団は要人警護を担う。第一騎士団という騎士団はなく、あるのは兄が総司令官をしている近衛騎士団がそのポジションだ。
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